のんびり人生散歩、ひとり言

いち平凡OLの日常、気ままな人生観

とある長男の回想日記<前編>

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日曜日、晴れた日差しが心地の良い春だった。


僕は彼女と、どちらの住まいからも
ほど近いショッピングセンターで
午後から待ち合わせをし、
買い物を楽しんでいた。



久しぶりの買い物で色々と欲しくなり、
僕は淡い茶色のジャケットにジーパン、
彼女はローヒールの靴や
インテリア雑貨店でスタンド式のガラスランプを購入して
紙袋の荷物も増えはじめ、
歩き疲れたこともあり
フードコートで少し休むことにした。


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お昼の時間を過ぎてはいたものの、
休日のフードコートは子供連れの家族や
カップルなどで賑わっていた。


僕たちはコーヒーフロートを購入し
席に向かい合わせに座った。



ふと彼女の後ろ肩越しのテーブル席に座る5、6歳の男の子が目にとまった。


その男の子の周りを
妹と思われる3歳くらいの女の子が
大きな声をあげて走り回り、
彼の顔の前に身を乗り出したりと、
ちょっかいをだしている。



母親は席を確保し、子供達の食べ物を
買いにいっているのだろうか。

その場にはいなかった。



妹は母親を待つ間、飽きてしまい
お兄ちゃんに遊んでほしかったのだろう。


彼はそれでも大人しく座って
静かに待っていた。


妹の方はつまらないと思ったか、
彼を叩きはじめた。
肩や腕を何回もグーで殴っている。




さすがにこれには耐えかねた男の子が

「やめろよ」

と女の子の手を振り払った。



すると女の子はバランスを崩し、
冷たい床に尻もちをついた。


突然の兄の反撃に驚いた様子で
しばらくキョトンとしていたが、
そのうち泣き出した。

兄の方も自分の振り払った手によって
まさか転んでしまうとは思わなかったようで
あきらかに動揺している。




女の子は騒がしいフードコート内でも
よく聞こえる大きな声で




「バカ!」


「バカ!」


「バカ!」



と泣きながら叫んでいる。




そこへ母親が戻ってきた。


手には何も持っていなかった。

女の子の声を聞いて気が付き
慌てて戻って来たのであろう。



ことのなりゆきを見ていないはずだが母親は、
真っ先に兄を見下ろし



「何してるのよ!!!」



と女性ながらも凄みのある声で怒鳴りつけた。




男の子は何も言わなかった。



そして母親は妹を抱き上げると
何かを買いにまたどこかへ行ってしまった。



1人残された男の子は
僕と同じ方向に正面を向けて座っていた為
後ろからでしか様子が伺えなかったが、
母親が去る時の
その後ろ姿を見つめる横顔に
なんとも切なく胸が苦しくなった。







僕は彼を昔の自分の記憶に重ねて見ていたのだと思う。




〜続く〜