のんびり人生散歩、ひとり言

いち平凡OLの日常、気ままな人生観

とある長男の回想日記<後編>

〜前回の続き〜

cafeyoganatural.hatenablog.com

僕は彼女と、あるショッピングセンターのフードコートで休んでいた。

目の前のテーブルに座る男の子が気になって仕方がなかった。 

 

そして、子供の頃のことを思い出していた。

 

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僕にも2つ下の妹がいる。

 

 
彼女は昨年の11月に入籍し、
今年の3月に結婚式を挙げたばかりだ。
 
 

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バージンロードをドレスを着て歩く姿、
神父の前で誓いを交わす時、
もちろん何時でも会えるのだが
嫁に行き、他の家族になってしまうことがなんだか寂しくて
人前で泣いてしまった。
 
 
 
シスコンだと思われても
仕方がないと思う。
妹が産まれて、小さな手を握った時から
僕が守らなきゃって
ずっと思ってきたことも事実だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
‥…そんな妹がまだ1歳と半月の頃。
 
 

住まいは築20年ほどの
市営住宅だった。

僕らは居間のコタツの前で
ブロック遊びをしていた。
 
 
親たちはキッチンのある部屋の
ダイニングテーブルに座っていた。
 
居間とキッチンの間に仕切りはなかったが、
僕らの様子はその背の高いテーブルの陰に
隠れて見えなかった。
 
 
 
妹は体の前に足を伸ばして
僕が組み立てるブロックを見ながら
ねずみ色の絨毯の上に座っていた。
 
 
しばらくして、
妹はよろよろと左へ傾いたかと思うと
四角いコタツのテーブルの角に
頭をぶつけて泣いてしまった。
 
 
僕は積み上げていたブロックの手を止めたが、
とっさの出来事に
どうする事も出来なかった。
 
 
 
すると突然
僕の脇腹に激痛が走った。
 
 
 
食事をしていた父親が
立ち上がり、近づいてきて右足で
蹴り上げたのだった。
 
 
その時の衝撃で僕の手が、
近くにあったプラスチックの
黄色い籠にぶつかった。
中に入っていたブロックは
見事にひっくり返り、
バラバラに散らばった。
 
 
 
痛みと驚きで
横たわってうずくまった僕は
顔を歪めながら父親を見上げた。
 
 
 
父親は妹を抱きかかえ、
僕を怖い顔で見下ろしこう言った。
 
 
 
 
 
「自分より弱いものを苛めるんじゃない!」
 
 
 
 
痛みに耐え父親の威厳に怯えながらも
弱々しく、かぼそい声ではあったが
 
「僕はやってない…」
 
 
と言葉に出してやっと言えた。
 
 
 
 
 
だが、
 
 
「嘘をつくな!」
 
 

父親は信じてはくれなかった。
 
 
 
 
 
 


親に信じて貰えなかったという悲哀感は
僕の中の黒く深い、
じとっとした渦巻く窪みの奥底へ
鉛のような塊となって落ちていった……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

もう20年以上も前のことになる。
 
 
 
 
当時は父親に絶望感と恐怖、
そして怒りも感じたが、
 
それも大人になるにつれ
あれも親なりの教育だったのだと
だんだん気持ちは薄れていった。

そして見えない真実の追求は
大人でも難しいということを知った。


ただ、いまだにあの時の塊の存在を
まだ胸に感じる事がある。
 
  
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


「なに、ぼーっとしてんの??」
 
コーヒーフロートのバニラアイスを食べ終わり、
半分ほど飲み干した彼女が
ストローで氷をさしながら僕を見つめている。
 
 
 
「ごめん、ごめん。。」
 
手元のグラスの中、
氷の上で少し溶けかけたアイスを
僕はスプーンでつつき始めた。
 
 
「も〜、だいぶ疲れてるじゃん?年だね〜!」
 
彼女は茶化しながら笑っている。
 
 
 
 
 
 
いつか‥…もし僕らに可愛い家族ができ、
1人の兄、1人の姉の親になる事があったら
 
 
下の子がいくら大泣きしていても
冷静に彼らと向き合い、
彼らの話にきちんと耳を傾けたい。
 
 
幼い頃は成長の違いもあるだろうが、
個々の行いについては上も下も関係なく
できる限り、公平な目で見てあげたい。
 
 
 
 
そう誓った春の日、フードコートでのひと時であった。
 
 


 
 
 
 
 
 
 


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 長男にまつわる、あれこれのお話。


お読みいただき、
誠にありがとうございます。